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加工事例

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Processing example

アクリルをレーザー加工する時のテクニックをこっそり紹介

今回は、アクリル板のレーザー加工について、詳しく解説しようと思います。

CO2レーザーでの加工において、最も安定した仕上がり品質を持ち、一番相性が良い素材と言っても差し支えのないアクリル板。
過去の記事でもアクリルのレーザー加工例は頻繁に掲載させていただきました。

ここで一旦弊社で蓄積したノウハウも交え、アクリル板のレーザー加工におけるアドバイス的なまとめを出す事で、皆様のお役に立てるかなと思いましたので、しばしお付き合いいただければ幸いです。

もくじ

最初にアクリルの製造方法によって、加工時の仕上がりに違いがあるので認識が必要です。

キャストと押し出しの違い

アクリル板の製造方法は、キャストと押し出しの2種類あるのはご存知かと思いますが、それぞれの特徴について改めて比較してみましょう。

キャスト製法 押し出し製法
硬度 高い 低い
熱影響 出にくい(反りにくい) 出やすい(反りやすい)
溶剤耐性 高い(ヒビが入りにくい) 低い(ヒビが入りやすい)
接着強度 弱い(溶けにくい) 強い(溶けやすい)
板厚精度 低い(公差が大きい) 高い(公差が小さい)
凝固時間 長い 短い(大量生産向き)
価格 高い 安い

キャスト製法は、流し込んだアクリル原材料を時間をかけて温め、ゆっくりと固めるので、分子構造が揃い強度が出ます。一方、押し出し製法は、粘土状に溶かしたアクリル樹脂に圧をかけ整形、更に短時間で固めるので、分子構造が不揃いで強度が弱い特徴があります。

強度があるキャスト製のアクリルは、水族館の水槽や店舗の看板、車のヘッドライトなど、屋外使用の製品に向いており、強度が弱い反面、大量生産し易い押し出し製のアクリルは、アクセサリーやおもちゃ、文具や収納ケースなど、小物またはホビー的要素の製品に向いています。

キャストと押し出しの加工比較

実際にアクリル板をCO2レーザーで加工する場合は、遠赤外線による熱影響を与える事になります。レーザー加工時におけるキャストと押し出し、それぞれの仕上がりの違いを見てみましょう。

弊社では、アクリル板はいつも「はざいや」さんで購入しております。一時期コロナの影響で品薄でしたが、最近は落ち着いてきたみたいですね。

この加工比較のサンプルで使用した透明アクリルの厚みは、3mmにしてみました。

彫刻比較

キャスト
押し出し
加工パラメーター:パワー30%、スピード30cm/s、スキップ2(500dpi)

切断比較

キャスト
押し出し
加工パラメーター:パワー24%、スピード3mm/s

レーザー加工時の彫刻および切断の仕上がりをそれぞれ比較すると、

キャスト(透明) 押し出し(透明)
彫刻加工 彫刻面が白くなる 彫刻面が半透明になる
切断加工 断面がザラつく 断面がツルツル

以上の特徴により、彫刻をするのであればキャストを、彫刻はせずに、切断のみをするのであれば押し出し(~6mmまで)をチョイスすると良いでしょう。

またアクリルは、顔料が入ると熱影響を受けやすくなるので、色付きのアクリル板は、キャストでも押し出しのような仕上がりになり易い特徴があります。

ちなみに加工後に余ったアクリルを保管する際は、キャストか押し出し解るように、ラベルを付けておくと後で迷わなくて済みますよ。

厚いアクリルの注意点

厚いアクリルをレーザーカットする場合は、キャスト・押し出し共に注意が必要です。

8mm以上の厚さになると、40Wの HAJIME では、必然的に高パワー&低速でカットする事となり、またアクリル自体も蓄熱しやすいので熱影響を大きく与えてしまいます。

加工中は非常に高温で、熱変形し易く、更にカットラインが近接していると焦点周辺が融点を超え、気泡がブクブクと出てきます。

基本的に、8mm以上のアクリルはキャストを使い、細かいデザインのカットは避け、単純なパスで大きめのサイズのみをカットして下さい。(キャストでも細かいデザインのカットは出来ません。)

また、発火しやすいので、表・裏とも保護シートは必ず剥がしてカットしてください。

製法の違いにおけるポイント

 彫刻面が白くなるのはキャスト
 切断面が綺麗なのは押し出し
 厚板の切断は、キャストを使い、小さい(細かい)データは避ける
 厚板の切断は、表面・裏面ともに養生しない

アクリル加工のコツ

それでは、ここからアクリルをレーザー加工する際のテクニックをこっそり紹介しようと思います。

表面の曇りを回避する

レーザーで彫刻した際、削り粉が表面に付着し、曇ってしまう場合があります。これはレーザーのパワーを抑えるか、アクリルの表面を養生すれば回避できます。

養生する場合は、マスキングテープを隙間なく貼るか、保護シートを残したまま彫刻します。

ちなみに写真彫刻をする際は、微細なドットが表現できないので、養生はしないでください。

カット時の保護シートについて

レーザーカットの際に保護シートがあると、保護シートにあるビニールの層が熱影響を受け、カットラインに沿ってアクリルにモヤモヤした跡が付くことがあります。

※ 写真がうまく撮れなかったので画像加工してあります。見えるか見えないかぐらいの薄い跡が付きます。

レーザーカットも含む彫刻の場合は、保護シートは剥がし、マスキングテープに貼り直したほうがよろしいかと思います。(特に長期保管した保護シート付きのアクリルは跡が付きやすい印象があります。)

また、裏面の保護シートは発火しやすいので、剥がしてカットする事を推奨しております。

養生(保護シート)におけるポイント

 彫刻面(表面)のみ養生する
 裏面の保護シートは剥がす
 写真彫刻は養生しない
 保護シートの跡が付く時はマスキングテープに変更

切断時のキズを回避する

切断時に意図しないキズが、カットライン(切断面)に入るときがありますが、原因は大体下記の3つです。

反射によるキズ

ハニカムテーブルにアクリルを直置きしてカットすると、反射したレーザーがアクリルに当たり、写真のような傷が付きます。

これは、アクリルを浮かせてカットすることで回避できます。
オプションのオフセットピンテーブルを使うか、アクリルなどの端材を間に挟み、カットしてください。5mm以上距離があれば大丈夫です。

始点終点によるキズ

レーザーカットでのパスの切り始めと終わりが交わる所には、必ず縦線の跡が付きます。跡が気になる場合は、目立たなそうなコーナー付近のアンカーポイントに始点を作りましょう。

カットライン(コーナー付近のアンカーポイント)に 0.3mmくらいの隙間を作り、オープンパスにしてください。

HARUKA はデータ読み込み時に自動で切断する順番を解析するのですが、オープンパスはクローズパスより先に切るアルゴリズムになっております。先に切ると都合が悪い時は、切断順番最適化を無効にして、マニュアルでカットソートする必要があります。(レイヤーの積層順を整理する)

詳しくは、こちらの記事も参考にしてください。

ビームタッチによるキズ

低速でレーザーパワーが必要な、5mm以上のアクリルを浮かせてカットしている時に起こりやすい現象です。切り抜いた際、下にズレて落ちたアクリルに、ボケたレーザースポットが一瞬当たって丸いキズが付く場合があります。

ビームタッチを回避するには、切り抜いたアクリルを下に落とさない工夫が必要です。

切り抜くサイズが大きい場合は、切り抜く下面にも支えを入れ、サイズが小さい場合は外周をオープンパスにするなどの対策をして下さい。

キズ回避におけるポイント

 浮かせてカットし反射キズを回避する
 始点・終点をコーナーアンカーに変える
 切り抜き時にズレ落ちないよう工夫する

キャストだけど断面を綺麗にしたい

通常キャストでも、厚板であれば熱が逃げにくく、必然的にツルツルの断面になるのですが、2~3mmの薄板だとザラつきが目立ちますよね。薄いと熱が逃げやすいという事でもあります。

これは、ある意味無理やり熱影響を大きく与える事で、そこそこツルツルに出来ます。

大きな声では言えない裏技がありまして、エアーアシストを切り、高パワー&低速でカットすると綺麗な切断面が得られます。
発火の危険を伴うので推奨出来ませんが、自己責任の元で監視を怠らず行ってください。

HAJIME の背面パネルにあるコンプレッサーのコンセントを抜いて、OFFにします。

アクリルは必ず、表・裏ともに養生なしでカットしてください。保護シートが貼ってあったり、カットラインがゴミをまたぐと、高確率で発火しますので。

PW:24%、S:3mm/s、エアーアシスト有り
PW:75%、S:3mm/s、エアーアシスト無し

3mmのアクリルに、30mmの丸いパスをカットしました、共にキャスト板です。
コンプレッサー無し(エアーアシスト無し)のほうが綺麗なのが解るかと思います。

ツルツル断面にするポイント

 高パワー&低速カットでザラつきを軽減できる
 コンプレッサーOFFでザラつきを軽減できる
 コンプレッサーOFFの際は、表・裏ともに養生しない
 コンプレッサーOFFの際は、絶対に加工機から離れない

アクリルのひび割れについて

レーザー加工機は、光学部品のクリーニングにアルコールやエタノールを使うので、多くのユーザーが常備していらっしゃると思います。

日頃より使い慣れているので、加工後の削り粉が付いたアクリルを、ついアルコールで拭きたくなってしまうのですが、注意が必要なんです。

押し出しのアクリルは、揮発剤に弱く、アルコールやエタノールで清掃すると、高確率でひび割れが起こります。

キャストについては大体問題ないのですが、一応純度の高い溶剤は、避けたほうが良いと思います。
基本的に削り粉などの汚れを落とす際は、中性洗剤を使って水洗いをしてください。

また、ネームプレートの作成などで、彫刻面に塗料を入れる時は、キャストを使用して、はみ出た塗料の拭き取りは、希釈した溶剤を使ってください。

クリーニングにおけるポイント

 押し出しにはアルコールなどの揮発剤を使わない

アクリルの引火性について

最後に、アクリルの引火性について触れておきます。

以前の記事でも掲載しましたが、アクリルを加工した時に出る燃焼ガスは可燃性です。特にエアーアシストが無い状態だと非常に引火しやすいので、監視を怠らず十分注意して行って下さい。

こちらの記事に詳しく掲載しています。

アクリルは CO2レーザーと相性が良く、多くのユーザーが加工に勤しんでいると思いますが、実は一番火災事故の多い素材でもあります。

加工特性だけではなく、危険性も十分考慮してレーザー加工を楽しんで下さいね。

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