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加工事例

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Processing example

シングルストロークフォントを使って極小文字を刻印してみた

唐突ですが、私朝は4チャンの「ZIP!」派です。今日(2021年9月1日)は、ガチャガチャがブームと言う事で特集をしてました。

カプセルトイの市場規模は、なんと100億円以上に拡大しており、ガチャガチャだけの大型店が、全国に50店舗以上も誕生しているとの事。

中身のおもちゃを製造するメーカーは、大人がハマる商品をメインに開発されているようで、シュールなキャラクターアイテムや精巧なミニチュア模型の人気があるのだそう。

小さい物にも需要があるんだなぁと、無責任な感心をしていてふと思い出しました。弊社にいただく問い合わせの一つに「どのくらい小さい文字を加工できますか?」と聞かれることがあります。

通常「大体 2mm 角(6pt)程度の文字が彫刻できる最小の大きさです。」とお答えしているのですが、いつも何に加工するんだろうと思っていました。もしかしたら、ガチャガチャのメーカーさんからも問い合わせがあったのかもしれません。

もくじ

まだ弊社でも、HAJIME で彫刻できる最小文字サイズを詳しく検証したことが無いので、これを機会に極小文字のレーザー加工に挑戦してみようと思います。

極小文字の彫刻はデータの作り方に工夫が必要です。というのも、ラスターモードで彫刻するよりベクターモードで刻印したほうが仕上がりが綺麗で鮮明だからです。

実はいつもお答えしている「2mm 角程度が最小の文字サイズ」というのは、ラスターモードでの話です。ベクターモードで文字を刻印するにはデータの作成が大変なんですよ。

ラスターモードとベクターモードの違い

ラスターモードとは、レーザーヘッドが X(横)軸方向に水平走査しながら Y(縦)軸方向にステップし、彫刻を指示する黒色の塗りつぶし箇所にビームを照射していきます。ベクターモードは赤線で描いたパスの軌跡を、そのままレーザーヘッドがトレースしてビームを照射します。通常、彫刻加工はラスターモード、切断加工はベクターモードを使用します。

この加工モードの特性により、ラスターモードで極細線を彫刻する場合、縦線はレーザーヘッド片道走査時のビーム照射時間が極端に短くなるので点線になりやすくて苦手なんです。

極小文字は必然的に極細線となるので、ラスターモードだと、文字の縦線がかすれて視認性が悪くなりやすいのです。そのため HAJIME では、2mm角(6pt)程度、太さが 0.1mm以上の文字がラスターモードで綺麗に彫刻出来る限界かなと思っています。

ラスターモードとベクターモードの違いについては、以前に掲載した「メープルの無垢材にレーザーで刻印加工してみました」でも解説していますので参考にしてみてください。

一般的なフォントとストロークフォントの違い

と言う訳で、ベクターモードの刻印なら線(パス)でテキストデータを作れば解決!となるのですが、PCにインストールされているフォントデータは線で構成されていませんよね。

イラストレーターでテキスト入力してアウトライン化すると、当前ですが必ず塗りつぶしになります。1本線で書いた文字には変換出来ません、どうしたものか。

そこで、ストロークフォントという便利なフォントがあるんですね、1本線のパスで作成されたフォントです。なんと、無料で入手できちゃいます。

上記サイトに置いてある「M+ FONT」と「Lettring ISO 3098」という SVGファイルをダウンロードしてイラストレーターで開いてください。(SVGだと重いのでPDF変換をおすすめします。)

なぜか、ひらがなの「を」と「ん」が無かったので自ら作りました。

1本線で書かれた文字がずらーっと並んでいるのが確認出来ますね。それでは早速、加工データを作りましょうか。

スケール感が分かり易いので、最初は爪楊枝に刻印してみましょう。爪楊枝の太さは 2mmほどあるので加工出来ると思います。文字のサイズは 1.4mm角(4pt)で挑戦。

イラストレーターの「文字ツール」を使い、4ptで下書きとなるテキストを作ります。そのテキストレイヤーの上にストロークフォントのレイヤーを重ねていきます。

ストロークフォントはキーボード入力では出力できないので、1文字1文字ダウンロードしたファイルから、目視で探し出して、コピペして、リサイズして、綺麗に重ねる必要があります。

・・・という事です。大変さ解っていただけました?とにかく使いたい文字(特に漢字)を目視で探し出すのに、めちゃくちゃ骨が折れるんですよ。

漢字が無くて文字数が少なければ、手間はないのですが、社名と住所で32文字。この程度の文字数ならまだ大丈夫、心折れません。

データ作成はなんとか2時間くらいで終わりました。

レーザー加工開始

せっかくなので、ベクターモードでの刻印と、ラスターモードでの彫刻の比較も行いましょう。切り抜く訳では無いので、HARUKA の「切断順番最適化」はOFFにしても大丈夫です。

ウルトラシャープフォーカスレンズの装着

HAJIME は、微細彫刻専用のウルトラシャープフォーカスレンズをオプションで用意しております。今回のようなベクターモードでの極小文字の刻印は、相性が良いので装着させていただきました。

レンズ後ろのエアホースを外して、ノーマルレンズと付け変えます。フォーカス距離が短くなるので、焦点合わせツールも付属の短い物を使ってくださいね。

爪楊枝の刻印加工

ハニカムテーブルに固定したコピー紙に、爪楊枝の輪郭をカットして、穴が開いたところにセットします。データ上では爪楊枝の輪郭線の中心にテキストを位置合わせしているので完璧なはず。

加工面積が小さいのですぐ終わりました。パラメーターは以下の通りです。

 レーザーパワースピード解像度
ベクターモード 刻印4%(1.6W)10mm/s
ラスターモード 彫刻25%(10W)300mm/s1スキップ(1000dpi)

ちなみに加工時間は、ベクター刻印が25秒、ラスター彫刻が19秒で終わりました。

仕上がりの違いは以下の通りです。

思いのほかラスターモードがうまく加工出来てしまったので少々コメントしずらいですが、全体的にぼやけた仕上がりかと思います。

ベクターモードの方が鮮明で、縦線も綺麗に加工出来ています。

爪楊枝は素材が木ということもあり熱吸収率が高く、線が太くなっていると思うので、別の素材でも試してみましょう。

アルミ銘板プレートの刻印加工

次は銘板をイメージして、86mm x 54mm の黒色を塗布したアルミプレートに加工してみます。黒い塗膜をレーザーで剥離するわけですね。アルミ自体への刻印は出来ないのでご注意ください。

この加工データはですね・・・

総数572文字をストロークフォントに差し替えるのに、2週間以上もかかった超力作です。1.4mm角(4pt)と、1.0mm角(3pt)の文字を配置しています。

この銘板のレーザー加工も、コピー紙にアルミプレートの輪郭を型抜きして位置合わせをしました。

加工パラメーターは以下の通り。

 レーザーパワースピード解像度
ベクターモード 刻印4%(1.6W)10mm/s
ラスターモード 彫刻8%(3.2W)300mm/s1スキップ(1000dpi)

加工時間は、ベクター刻印が9分48秒、ラスター彫刻が9分21秒でした。

ベクター刻印とラスター彫刻の仕上がりの違いは以下の通りです。

この銘板の比較は分かり易いですね。

ラスターモードの方が線が太くて荒く、4pt文字・3pt文字ともに、縦線が途切れてかすれている所が多々あります。表組の縦線もガタガタしています。

拡大鏡でも見てみました。ベクターモードの刻印なら、1.0mm角(3pt)でもギリギリ加工出来るレベルではないでしょうか。

いかがだったでしょうか。今回の極小文字の刻印は、プロッター方式の HAJIME でも、ベクターモードで刻印すれば 1.0mm角(3pt)の文字サイズを刻印出来る事が解りました。

漢字の種類により潰れてしまう場合もありますが、英数字であれば問題なさそうです。ここで改めて HAJIME で彫刻出来る最小文字サイズを下記にまとめておきますね。

・ラスターモード:2.0mm角(6pt)まで可
・ベクターモード:1.4mm角(4pt)まで可 ※英数字は1.0mm角(3pt)まで可

 素材の熱吸収特性に依存します。燃え易い又は溶け易い素材は文字が潰れる可能性があります。

意外と HAJIME も、そこそこ精度があるなと改めて思いました。今回の記事は、あまり使い道の無い加工例かもしれませんが、ご購入時の参考になったら幸いです。

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