加工事例
Processing example
- 2017-10-10
HAJIME レーザー加工機で金属にレーザー加工してみました
暑さも一段落して過ごしやすくなってまいりました。芸術の秋ともいわれるこの季節、レーザー加工にもぴったりの時期かもしれません。

さて今回ご紹介する加工事例は、禁断の金属素材への直接加工を行ってみようと思います。
もくじ
加工レシピ
使用した材料 | ステンレス製 カトラリー、コテ、コイントレー |
レーザー加工時間 | カトラリー1本:彫刻3分 コテ1本:彫刻20分 コイントレー:彫刻20分 |
光の波長とレーザーの種類
それでは、まず加工の前にお勉強です。レーザー加工が可能か否かは、素材のレーザーに対する吸収特性に大きく影響します。またそれは、光の波長により変化し、レーザーは光の波長により分類されています。
弊社の HAJIME レーザー加工機は CO2レーザーとなり、遠赤外線の不可視光レーザーです。一般的に金属には吸収されにくい種類のレーザーとなります。

基本的に金属へのレーザー加工は、YAGレーザーやファイバーレーザーなどの、近赤外線領域の 1.03 ~ 1.09μm の波長をもつレーザーが得意とします。
一方、HAJIME のCO2レーザーの波長は 10.6μm となり、金属以外の樹脂系、木材、紙などに吸収されやすく、相性が良いことで知られます。
つまり加工対象が金属の場合、遠赤外線域にあるレーザー光の吸収率は、近赤外線域にあるレーザー光よりも小さく、金属を加工しにくい特性を大前提に持っています。
金属のレーザー吸収率
下図を見ると、弊社 HAJIME は金属には吸収されにくい波長のレーザーというのがお判りいただけると思います。今回の加工事例は、ちょっとつらい加工になりそうです。

ちなみに、CO2レーザーでも高出力で照射すれば金属加工は可能で、1,000W クラスの産業用 CO2レーザー加工機も存在します。また、CO2レーザーは、焦点周囲に熱影響を与えやすい特性もあり、金属溶接などにも多く使われています。
ウルトラシャープレンズのご紹介
今回なぜ金属彫刻に挑戦したかというと、HAJIME のオプションで用意している、ウルトラシャープレンズの能力を試したかったのです。
標準装着のノーマルレンズとの違いは、以下の図の通りです。
ノーマルレンズとウルトラシャープレンズの違い

わかりやすく、ウルトラシャープレンズの長所と短所をまとめますと、
長所
- 焦点深度が短いためビームスポットのエネルギー密度が高い
- ビームスポットが小さいため彫刻加工時のコントラストが上がる
短所
- 集光角度が広いため加工断面が斜めになる
- 焦点深度が短いため厚い素材の切断加工は不向き
以上のような特徴をもっているため、素材表面の彫刻加工、マーキングには向きますが、切断加工には不向きです。また、焦点距離が短いためレンズが汚れやすいという弱点もあります。彫刻も切断もオールマイティーにこなすなら、断然標準レンズのほうが使い勝手がよいでしょう。
しかし、今回のようなレーザーを吸収しにくい素材の場合、ビームスポットのエネルギー密度の高いウルトラシャープレンズであれば、40WのHAJIME でも彫刻加工ができるかもしれません。金属の中でも鋼鉄(STEEL)や鉄(Fe)に近いレーザー吸収率をもっていれば可能性が高まります。
色々な金属へテスト加工
一般的に流通する金属素材は、合金や表面処理されたものが多いので、先ほどのレーザー吸収図ではいまいちピンときません。CO2レーザーとの相性がわかりにくいため、実際にテスト加工をしてみます。
HAJIME の部品制作でいつもお世話になっている、[ 株式会社トネ製作所 ] 様にお願いして6種類の金属板を用意しました。
ウルトラシャープレンズの金属加工比較

SPCC 冷間圧延鋼板 | SGCC 溶融亜鉛メッキ鋼板 | SECC 電気亜鉛メッキ鋼板 | SUS304-2B ステンレス鋼板 | A5052P アルミニウム板 | C2801P 真鍮板 | |
彫刻加工 ラスター | × | × | 〇 | 〇 | × | × |
刻印加工 ベクター | △ | × | 〇 | 〇 | × | × |
実際に加工をしてみると、SECC とステンレスは比較的きれいに加工できました。SECC のほうは、表面の亜鉛メッキ部分を剥がしたという感じでしょうか。シングルストロークで刻印(ベクター加工)した下部の数字については、SPCC でもなんとか視認できています。SGCC はうっすらと白いあとがついていますが、ほぼ視認できません。またアルミと真鍮にはまったく歯が立ちませんでした。
以前の加工事例で、マーキング剤を使用したステンレス看板の作例を紹介しておりますが、こちらは金属に直接加工をしているわけではなく、表面に塗布した特殊な塗料をレーザーの熱で焼付け固着させています。視認性を求めるのであれば、このような加工方法もあるので是非ご参考にしてください。
ちなみに標準レンズで同じパラメーターの加工をすると、以下のような感じになります。
標準ノーマルレンズの金属加工比較

SPCC 冷間圧延鋼板 | SGCC 溶融亜鉛メッキ鋼板 | SECC 電気亜鉛メッキ鋼板 | SUS304-2B ステンレス鋼板 | A5052P アルミニウム板 | C2801P 真鍮板 | |
彫刻加工 ラスター | × | × | × | × | × | × |
刻印加工 ベクター | × | × | × | △ | × | × |
一見、標準レンズでもステンレスに加工ができているように見えますが、実際には彫刻できていません。キズはつけられませんが熱による焼き色を付けることは可能なようです。しかし色味が定まらず、綺麗な仕上がりにはなりませんでした。ベクター加工で刻印した下部の数字については部分的に彫刻できているようです。
このステンレスの焼き色については、温度により色が 黄~紫~青 へと変化します。よくバイクのマフラーにグラデーションの焼き色がついていますが同じ原理ですね。
ステンレスの彫刻加工に挑戦
ステンレスは、鉄を主成分としたクロム、ニッケルなどを含んだ合金です。耐食性に優れているので、無垢の状態で日用品や雑貨に多く使用されています。手に入りやすい素材でもあるので今回の金属加工はステンレスに決定です。
飲食店風のロゴを作成し、ステンレスのカトラリーやコイントレーなどに彫刻してみようと思います。下の素材は、100円ショップやホームセンターで購入したものです。

加工データは、BAR風のロゴ、CAFE風のロゴ、お好み焼き屋風のロゴと、3種類のデザインを作成しました。
無理やり弊社製品名を使用しておりますがご了承ください。

事前に用意した冶具に、加工素材をマスキングテープで固定します。

次にハニカムテーブルに置いたコピー紙に冶具の輪郭をマークします。
マークした箇所に冶具をセットして加工スタートです。

素材がレーザーに反応し熱に変換されると、照射した箇所が昇華し光(火花)を放ちます。逆に素材がレーザーに反応しないと光を放ちません。

それでは同じ要領で、他の加工も進めましょう。


ステンレスの彫刻加工といっても、さすがに素材を深く削り込むことはできません。表面に薄く傷をつけるような仕上がりとなりますので、研磨といってもよいかもしれません。
レーザー加工完了
同じステンレスに見えても、それぞれ厚さや化合物の違いによるのか、仕上がりに違いがあるようです。

この100均で買ったカトラリーは、素材の厚みが 1.2mmくらいで、表面にヘアライン処理がされています。触った感じの質感は、すぐサビそうな安っぽいステンレスという感じ。
一応彫刻できましたが、加工面の色味は薄いグレー色になりました。

下のホームセンターで買ったコテは、素材の厚みが 0.5~0.8mmくらいで、ステンレスの質感は安っぽくは無く、研磨もしてありピカピカ、正真正銘のステンレスという感じです。
彫刻箇所は、黄色み掛かったグレー色になり、所々青っぽい焼き色も付きました。
他にも、もんじゃ用の小さいコテも買ったのですが、クロムメッキだったらしく彫刻できませんでした。(パッケージにはステンレスと書いてあったのですが)

最後のトレーは100均で買ったもの。厚さ0.3mmくらいのペラペラステンレスです。なんとなく、100均のステンレスは材質が悪い気がしてならないです。
しかしこちらも彫刻面は黄色み掛かったグレー色になり、青色っぽい焼き色も付きました。

いかがだったでしょうか。うまく加工できるか心配でしたが、オプションで用意しているウルトラシャープレンズの実力が発揮できて一安心です。
しかし一括りにステンレスと言っても、素材の厚みや化合物の違いによるのか、加工後の仕上がりが異なる事もわかりました。奥が深そうです。

金属加工の世界では圧倒的に低出力な 40W CO2レーザーの HAJIME ですが、ビームスポットのエネルギーを高密度にすることでステンレスへの彫刻加工は実現できました。
標準レンズでは難しい加工ですが、ウルトラシャープレンズとの組み合わせで、HAJIME の新たな使い道が開拓されたようです。彫刻できる金属は限定されますが、今回の加工事例にご興味がございましたら、是非お気軽にお問い合わせください。
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