加工事例
Processing example
- 2015-04-15
レーザー加工機でMDFを加工してミニチュア蓄音機をつくります
様々な電化製品が溢れている今、モノづくりの原点に立ち返り昔懐かしい蓄音機を再現しました。しかし、ミニチュアのオブジェですので、音は出せません。
今回の蓄音機のようにデータが複雑なものでも、レーザー加工とちょっとしたアイデアで作成が可能です。
制作過程でハーフカットの応用を含む4つの加工方法をお見せします。
もくじ
加工レシピ
使用した材料 | MDF2.5mm |
仕上がりサイズ | 蓄音機:約200 x 200 x 120mm スタンド:約200 x 105 x 95mm |
レーザー加工時間 | 約1時間40分 |
加工方法の説明
HAJIME における加工方法は、彫刻・切断という言ってみれば単純な加工となりますが、工夫次第で様々な仕上がりを見せることができます。
まず、今回の加工事例で使用された加工法を見ていきましょう。
彫刻加工
レーザー加工機は、よく英語で “Laser Engraving System” と言われます。つまりレーザー光で彫刻する機械のことです。この英語名を見れば、画像や文字の彫刻加工はレーザー加工機で最も重要な機能であることがわかるでしょう。
単純に彫刻と言いますが、彫刻面の粗さ、深さ、焦げの濃さなど、パラメーターの調整により、色々なパターンを表現することが出来ます。
硬い素材の場合、一度の彫刻で深さが足りなければ、同じ場所を複数回彫刻することもあります。また、その反面、一度で彫刻しないと二度目から彫刻面が汚くなる一発勝負のような素材もあります。
今回の加工素材であるMDFボードも一つ特性を持っており、煙を多く発生する材料となります。加工中に発生する煙は、エアーコンプレッサーの気圧で彫刻されていない所に付着し、彫刻する所と彫刻しない所の境目がヤニで汚くなる可能性があります。目立たない場所では気にならないかもしれませんが、目立つ場所は綺麗に仕上げたいものです。
そういった短所は、以下のように対策を施すことで補うことができます。対策を施さなかったものとで違いを比べてみてください。
普通に加工すると彫刻面にヤニが発生する
マスキングテープで養生した状態で彫刻
一目瞭然ですが、対策を施した方は周囲にくもりがなく、鮮明な仕上がりとなっています。上記のように、ちょっとしたアイデアでより美しく作品を仕上げることができます。
切断加工
単純に材料を切り抜くだけの事ですが、基本的な加工だからこそ妥協できません。加工機に求められるのは、切断面の垂直度、滑らかさ、加工精度という条件があります。
特にカット後、組み立てが必要なものなら「サイズが合わない」「切断面が斜めで面が合わない」「切断面がギザギザで汚い」ということは許される問題ではありません。
データを綿密に、微細に再現してこそ、今回のような作品が生まれます。
綺麗な切断面
ハーフカット
材料を完全に切り落とすのではなく、半分もしくは必要な深さまで切り込む加工です。
本来のレーザー加工は切断(切り抜き)しか考慮していませんでしたが、ユーザーのニーズが多様化してきた今、ハーフカットの需要も増えてきました。
今までハーフカットを最も多く行う場面は、ステッカーなどをカッティングシートで作る業界でした。台紙はカットせずに表紙のみカットする使い方がメインの用途です。本来はカッティングマシンで行う工法ですが、レーザー加工機でも対応が可能です。
それ以外にもハーフカットの用途はたくさんあります。代表的なものをご紹介します。
ハーフカットで輪郭がシャープに
彫刻加工でハーフカットの工法を使用することも多くあります。例えば彫刻したイラストや文字の輪郭をよりシャープに見せるために、イラストや文字の輪郭に沿ってハーフカットを施す手法があります。
ハーフカットで極細線が綺麗に
普通の彫刻ではなかなか綺麗に表現できない極細曲線の彫刻においても、ハーフカットが威力を発揮します。
データのデザイン性を際立たせ、よりシャープに、より鮮明に表現できることがお分かりいただけましたでしょうか。
折れ線カット
厳密に言うと、折れ線のカットもハーフカットの一種になります。弊社も最近組み立て加工をする機会が多く、改めて折れ線カットの必要性を感じました。
立体的な形状をデザインするためには、一枚の平たい板を曲面に構成する方法が考えられます。が、実はこれはとても難しいのです。曲面を細かい平面に裁断し、多数枚を繋ぎ合わせていけばいいのですが、組み立ての時にずれたり、合わないことがよくあります。
そこで弊社は、今回の作例を加工している最中にこの問題を意識し、細かく裁断(切断)する加工を諦め、材料を完全に切り落とさずに手で折れるギリギリの所までカットすることに方向性を変えました。
蓄音機の裏から見た折れ線カット
折れ線カットは今までのハーフカットの延長線上に生まれた加工方法です。
蓄音機のスピーカーが拡がる部分に注目してください。完全に切断するのではなく、微妙に素材を残す折れ線カットで、徐々にスピーカー部が広がっていく立体感を出しています。
4つの加工方法のまとめ
一つの小さな部品に、彫刻、ハーフカット、切断、折れ線の4種類もの要素があります。こういった細やかな加工が可能になるのも、HAJIME の強みでもあります。
レーザー加工開始
では、ここから的を絞って加工の手順をご説明します。
データ転送
用意された「蓄音機」のデータを制御ソフト HARUKA へ転送します。
ハーフカット、折れ線カット、切断はすべて切断加工に分類できますが、出力設定がそれぞれ違うため、分けて加工をする必要があります。
下記のイメージ図のように別々に転送します。
(彫刻は、いずれかの切断加工と一括処理することができます。)
HARUKA のデフォルトパラメーターは、MDF2.5mmの彫刻と切断しか用意されていないため、本番加工の前に端材で加工テストを行い、下記の設定を新規登録します。
・MDF2.5 ハーフカット用(切断の半分くらいの出力パワー)
・MDF2.5 折れ線用(切断の8割くらいの出力パワー)
折れ線用の設定は、かなり苦労したところでもあります。
というのも、切り過ぎてしまうと折り曲げた時に素材がちぎれてしまったり、逆に切り込みが浅いとうまく湾曲が表現できないということになります。最適なパラメータを見つけるために、この部分は予め何度もテストを繰り返しました。
加工終了
テスト加工を除き、約1時間40分ですべての加工が終了しました。
組み立て後の写真です。
加工法の工夫によって、既存の方法から、さらにグレードアップされたものができました。
レーザー加工機と人とのコラボレーション
加工機自体は、切断、彫刻といった作業を黙々とこなしていくだけですが、人の手を加えることによって様々な可能性を見せることができます。
逆に言えば、機械任せではなく人も参加することで、よりモノづくりの楽しさがより実感できるのではないでしょうか。
今回のように新しい工法を考えることによって、より美しく、より簡単に作品を制作することができるようになりました。
HAJIME レーザー加工機の正確さと、人の感覚の融合によって創造は無限に拡がります。
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