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様々な電化製品が溢れている今、モノづくりの原点に立ち返り昔懐かしい蓄音機を再現しました。しかし、オブジェですので、音は出せません。

今回の蓄音機のようにデータが複雑なものでも、レーザー加工とちょっとしたアイデアで作成が可能です。

制作過程でハーフカットの応用を含む4種類の工法をお見せします。

加工概要
使用材料 MDFボード(ファイバーボード) 厚み:2.5mm
材料サイズ 400 * 300 mm
機種 卓上小型 レーザー加工機 HAJIME
ソフトウェア Windows 8.1、Adobe Illustrator、HARUKA
レーザー加工所要時間 約1時間40分

全体 完成写真

HAJIMEにおける加工は、彫刻、切断という言ってみれば単純な加工となりますが、人の手が入り調整することによって様々な仕上がりを見せることができます。
ゆるやかな湾曲、デザイン性のある彫刻、折り曲げ線、できうる限りの技術(工法)を駆使した制作が可能です。

工法説明

まず、今回の加工事例で使用された加工法を見ていきましょう。

彫刻

レーザー加工機はよく英語で “Laser Engraving System” と言われます。つまりレーザー光で彫刻する機械のことです。この英語名を見れば、画像や文字の彫刻加工はレーザー加工機で最も重要な機能であることがわかるでしょう。単純に彫刻と言いますとイラストや文字などを加工することですが、具体的には彫刻面の粗さ、深さ、焦げの濃さなど色々なパターンがあります。
硬い素材の場合、一度の彫刻で深さが足りなければ、同じ場所で数回彫刻することもあります。また、その反面、一度で彫刻しないと二度目から彫刻面が汚くなる一発勝負のような素材もあります。

今回の加工素材であるMDFボードも一つ特性を持っており、煙が多く発生するものとなります。彫刻加工中に発生する煙はエアーコンプレッサーの気圧で彫刻されていない所に付着し、彫刻する所と彫刻しない所の境目がヤニで汚くなる可能性があります。目立たない場所では気にならないかもしれませんが、作品の特徴を表す部分なら完璧に表現したいものです。

そういった短所を、以下のように対策を施すことで補うことができます。対策を施さなかったものとで違いを比べてみてください。

普通に加工すると彫刻面にヤニが発生する

養生マスクで対策をした状態で彫刻

一目瞭然ですが、対策を施した方は周囲にくもりがなく、鮮明な仕上がりとなっています。
今回使用した養生マスク用のシートは、3M 製のマスキングテープです。

上記のように、ちょっとしたアイデアでより美しく作品を制作することができます。

切断(カット)

基本的な切り抜き加工です。基本的な作業だからこそ妥協は許されません。求められるのは切断面の垂直さ、切断面の滑らかさと切断サイズの精度という条件があります。
特に最後に組み立てが必要なものなら、サイズが合わない!断面が斜めになってギザギザで汚い!ということは命取りになります。
データを綿密に、微細に再現してこそ、このような作品に仕上がります。

切断の綺麗さを強調

ハーフカット(切込み)

要は材料を完全に切り落とすのではなく、半分もしくは必要な深さまで切り込む加工です。本来のレーザー加工は切断(切り抜き)しか考えていませんでしたが、ユーザーのニーズが多様化してきた今、ハーフカットの需要も増えてきました。
今までハーフカット加工を最も多く行うのはステッカーなどをカッティングシートで作る業界でした。台紙を切断せずに表紙までカットする使い方がメインの用途でしたが、本来カッティングマシンを買わないと出来なかったことが、レーザー加工機でもできるようになりました。
また、それ以外にもハーフカットの用途はたくさんあります。代表的なものをご紹介します。

ハーフカット加工で輪郭がシャープに
彫刻加工でハーフカットの工法を使用することも多くあります。例えば彫刻したイラストや文字の輪郭をよりシャープに見せるために、イラストや文字の輪郭に沿ってハーフカットを施す手法があります。

ハーフカット加工で極細線が綺麗に
普通の彫刻ではなかなか綺麗に表現できない極細曲線の彫刻においてハーフカットが威力を発揮します。

それ以外もたくさんの使い方がありますが、今回の加工事例は上記の両方の工法をご案内します。データのデザイン性を際立たせ、よりシャープに、より鮮明に表現できることがお分かりいただけましたでしょうか。

折れ線のカット

厳密に言うと、折れ線のカットもハーフカットの一種になります。弊社も最近組み立ての加工をする機会が多く、改めて折れ線の重要性を感じました。
立体的な形状をデザインするためには、一枚一枚の平たい板を曲面に構成する方法が通常考えられます。が、実はこれはとても難しいのです。
曲面を細かく分散し、平面を多数枚切断して最後に繋いでいけばいいのですが、組み立ての時に繋ぎ面がずれたり、繋ぎ目が合わなかったりすることがよくあります。
それで弊社は今回の事例を加工している最中にこの問題を意識し、本来の切断加工を諦め、材料を完全に切り落とさずに手で折れるギリギリの所までカットすることに方向性を変え、チャレンジしました。折れ線カットは今までのハーフカット加工法の延長線上に生まれた完全に新しい、とても魅力的な加工法です。

蓄音機の裏の折れ線写真

蓄音機のスピーカーが拡がる部分に着目してください。完全に切断するのではなく、微妙に素材の断面を残す折れ線カット工法で、徐々にスピーカー部が広がっていく立体感を出しています。通常のハーフカットとは違う新しい加工法を実感してください。

4種類の加工工法のまとめ


一つの小さな部品に、彫刻、ハーフカット、切断、折れ線の4種類もの要素があります。こういった細やかな加工が可能になるのも、HAJIMEの特色でもあります。

加工手順

では、ここから的を絞って加工の手順をご説明します。

データ転送

用意された「蓄音機」のデータを制御ソフトHARUKAへ転送します。


ハーフカット、折れ線カット、切断はすべて切断加工に分類できますが、出力設定がそれぞれ違うため、分けて加工をする必要があります。
下記のイメージ図のように別々に転送します。
(彫刻は、いずれかの切断加工一つと一括処理することができます。)

イメージ図

HARUKAソフトウェアのデフォルト設定ではMDF2.5mmの彫刻と切断のパラメーターしか用意されていないため、今回は本番加工の前に端材で加工テストを行い、下記の設定を新規登録しました。
・MDF2.5 ハーフカット用(切断の半分くらいの出力パワー)
・MDF2.5 折れ線用(切断の8割くらいの出力パワー)

折れ線用の設定は、かなり苦労したところでもあります。
というのも、切り過ぎてしまうと折り曲げた時に素材が切れてしまったり、また、逆に切り込みが浅いとうまく湾曲が表現できないということになります。最適なパラメータを見つけるために、この部分は予め何度もテストを繰り返しました。

レーザー加工、組立

加工完了した直後

完成写真

全体イメージ

加工法の工夫によって、既存の方法から、さらにグレードアップされたものができあがりました。

蓄音機テーブル

機械と人とのコラボレーション

加工機自体は、切断、彫刻といった作業を黙々とこなしていくだけとなりますが、人間の手を加えることによって様々な仕上がりを見せることができます。
逆に言えば、機械任せではなく人も参加することで、よりものづくりの楽しさがより実感できるのではないでしょうか。
今回のように新しい工法を考えることによって、より美しく、より簡単に作品を制作することができるようになりました。
機械の正確さと、人間の感覚との融合によって創造は無限大に拡がります。

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